*かごには何も入っていません。

"flower rain" 2006ss

"flower rain" 2006ss
フラワーレイン:花の雨(英語)

このデザインは絣織の一種で「ほぐし織」と呼ばれる技法を使っています。始めに経(たて)糸に花のプリントをして、その後、織り機にかけて緯(よこ)糸を織り込んでいくと花柄の絣織のテキスタイルが出来上がります。プリント工場と織の工場が比較的近くて、しっかりと連携できないと上手く織ることができません。織るにも、ほぼ人がつきっきりでないと柄が崩れた時に機械を止めて調整する事ができないので、とても手間がかかるテキスタイルです。

このテキスタイルは現在、私たちの物づくりの背景ではできなくなってしまいました。今までできていたものができなくなることは残念なことです。物の価値の測り方がとても短期的になり、価格優先となって大量に作れるものへと移行していく中で、私たちが物に心を留めて大切さを感じながら暮らすことが見過ごされてきたように感じます。

デザインとは本来、物と人の暮らしを豊かにする知恵です。物が売れさえすれば良いというものではなくて、物が暮らしの中で人と豊かな時間を紡ぐようにするのが本質的な目的です。そしてその営みが続くように技術を絶やさず生かし続けることもデザインの役割だと思います。

この"flower rain"もまたいつの日か復刻できる環境を整えられたらと思います。手間のかかるものほど、そこに流れた時間や風景がいつまでも大切に思い出されます。こうして生まれたデザインが長く暮らしの中で生きていくことを願います。

text by Akira Minagawa

photo by sono