*かごには何も入っていません。

1/21 あの日

あの日をもう一度見ることは
できない

断片的に心がとらえたあの日
事実であるかのように淡い記憶
が瞼の奥で現像される

手漕ぎボートが過ぎた湖面に
双曲の放物線を残して

私は行く先に背を向け
オールで水を押しやって
今来た景色をまばたきで
コマ送りした

湖面には逆さの世界がたゆとうて
あやふやな時空を微笑んでいる

水中ではワカサギたちが
陽光のきらめきを
銀面の腹に反射させて戯れている

もうあの日は来ない
幼い瞼に残った
ほんの小さなある日は
今になって私を
突然に包みこんだ

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