*かごには何も入っていません。

7/15 夏の宝物

山ではもうヒグラシが
鳴いていた。

木々に吸い込まれていくような
あの美しい音色を聞くと

私は子供の頃に父と登った
夕暮れの山を思い出す。

今の私よりもずっと若かった父の
盛り上がったふくらはぎをじっと見て登る道。

迎えるように
見送るように
ヒグラシ。

いつしかそれは風の音色のように私には
聞こえていた。

頭の奥でカナカナと
つぶやく。

ヒグラシとふくらはぎ

可笑しなセットで
仕舞われている私の

夏の宝物。

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