*かごには何も入っていません。

ceramic artist — Masanobu Ando

ARTIST LIBRARY #002

お気に入りのお皿は、日々の生活をより楽しく豊かなものにしてくれます。岐阜県・多治見に「百草」の工房と「ギャルリももぐさ」を構えて活動されている陶作家・安藤雅信さんの器は、長く大切に使いたくなるものばかり。

minä perhonenは、日常の中に特別な喜びが増えていくよう願いながら、また、長い時間愛用されることを想いながら物作りをしており、安藤さんと百草の活動には共感するところが多いと感じていました。

今回が2回目となるARTIST LIBRARY では、安藤さんに、着る・食べる・住むという生活の基本から見つめた美術と工芸の在り方を伺いました。

【安藤さんが考える日本人のアート】

「美術大学卒業後、ヨーロッパへの憧れはありましたが、日本人として、ネイティブにできる物づくりは何だろうと考えて焼き物をしようと思った時、茶道がわかれば焼き物のこともわかるだろうと茶道を始めました。でも、やってみたら茶道の世界は奥深くて。造園、建築、意匠、花、、と様々な要素が入っている時間芸術でした。仏教的精神も茶道を通して学びました。」

「茶道だけでも400年以上かけて熟成してきたものですし、焼き物は縄文土器から入れれば16000年以上の歴史があります。それを自分のものに消化して、さらに新しいものを作る事は簡単ではないと思いながら、それに、ずっと実直に向き合ってきました。僕は、器はアートと繋がっていると思っています。」

画像:news

「古いものを知った上で、現代に合う新しいもの、これがあったら良いなと思うものを制作の基本にしてきました。これからあったら良いなというものを、自分が影響を受けてきた日本文化も海外文化もミックスして、カテゴリーや境界に囚われずにやっていきたいという気持ちも、ずっと持ち続けてきました。」

【“たたら”という技法】

「一般的な焼き物の勉強では、ろくろ制作が重要視されてきました。ろくろは回転体で同じ形のものを早く、大量に作れる優れた職人的技術。しかし、僕は焼物の産地に生まれ育ったので、下に見られている素材やローテクの技術に関心があり、ろくろ技術に興味が持てませんでした。」

「美大では彫刻が専攻で、石膏型を掘ることが大好きでした。自分の学んできたことや得意な技術を焼き物で生かそうとした時に、たたらが一番身近でした。
たたらの技法は、石膏型を掘り、その型に粘土をあてて乾燥させた後、型から抜いて焼き上げます。型は一般的には回転体で綺麗に掘ることが多いのですが、僕は、全部のみ一本で掘ります。掘ってる時のサクサクした感触がすごく好きなんですよ。そして、彫った微妙な揺らぎみたいなものが、粘土を型に当てたり、型から抜いて焼き上げた時にも乗り移るので、微妙な揺らぎが出ます。」

「ろくろと違って、たたらだと楕円も四角も自由にできます。ろくろだと、基本的には回転体しかできません。僕は、たたらで作った自由な形に、さらに何か、例えばカップなら持ち手などをつけて完成させるのも好きですね。」

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【ものの価値】

百草の、揺らぎを持ったフォルムの美しい器たちは日々の生活の中で独特な存在感を放ちます。古民家を移築した「ギャルリももぐさ」では、伝統的な日本建築の美、陰影の美も感じます。安藤さんにとってのものの価値について伺いました。

「誰も評価していないものに、何か新しい価値や潜在能力を見出し価値づけていく事が、僕はアートの仕事だと思っています。自分自身がアーティストかはわかりませんが、アート的な役割を、技法にも、素材にも、全てに対して働きかけることが、僕がやっていきたいことであり、やってきた事だと自負しています。」

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「ほとんどの器は、裏には釉薬が塗られていないのですが、僕は、器に裏というものを持たせたくなかった。だから器全体に釉薬を塗ります。そのために、手間も増えるし完成時に不具合をもつ確率も増えるのですが、ずっとそうしてきました。」

*写真の、小さな黒い三角錐部分は、窯入れの時に器や作品の下側にあてる粘土製の目土(簡易的なトチ)というもの。百草の陶器の裏側にある、丸形の素焼き部分は、この目土を当てていた場所です。

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「僕の人生で、作家活動とギャラリー活動は両輪でした。これからも、そこに注力していきたいし、後世に繋げていきたい。どうやったらこの文化がちゃんと残っていくか。そういうことを構築していけたらなと思います。 そして、評価されようがされまいが、でもこういうのが好きだよって見せていきたいから、ついやりたいようにやってしまいますね。」

安藤雅信

陶作家/現代美術家。岐阜県・多治見の「ギャルリももぐさ」を主宰。和洋中を問わず盛り付けられる定番となる食器をこれまで千種以上、他、茶道具や彫刻を制作。妻は衣服作家の安藤明子。
minä perhonenとは、2010年より「ギャルリももぐさ」での「つくりの回生」という催しで協業しており、2022年までに8度の「つくりの回生」でminä perhonen及び皆川明との共同制作や展示をしてきた。

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photograph: Hua Wang