*かごには何も入っていません。

wood artist — Ryuji Mitani

ARTIST LIBRARY #001

minä perhonenでは、私たちを取り巻く環境や社会を見つめながら、暮らしの中で新鮮さや特別な喜びがあるデザインやものづくりができたらと考えています。丁寧につくられたものを長く愛用していくことにより生まれる時間が、日常をより特別なものにし、たくさんの良い記憶が生まれればと願います。

ARTIST LIBRARY一回目となる今回は、生活工芸という、生活に根付いた工芸のあり方に真摯に向き合い続けていらした木工デザイナーの三谷龍二さんのお話をうかがいました。三谷龍二さんは、長野県・松本に工房「ペルソナスタジオ」を構え、1981年から活動を続けていらっしゃいます。工房「ペルソナスタジオ」の、手跡の残る有機的なフォルムの器は、食卓を美しく、優しく彩ります。日々の料理を包み込むようなそれらの器は、三谷さんによる生活への眼差しから生まれていると感じます。

【生活を大切にする】

「生活というものを大切にしてきました」と三谷さんは言います。「生活から必要だと感じるものを作家が作り、それを生活者が自分の暮らしに取り入れていってもらえればとも考えてきました。作り手がある程度、使い手としての自分たちの訓練をしているのだと思います。ごはんを食べる事や、一つ一つの仕事に向き合ってちゃんとすること、そういうことが結果的に作家としてのものづくりにも影響してくるのだと考えてきました。」

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「工芸的な技術としての密度を上げていくということと、生活者としての使う時の密度を上げていくこと、どっちが良いということではなくて、両方が必要だと思っています。」

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「米をといで、その米が流し台に流れてしまう時、胸が痛むものがあるじゃないですか。ああいうことって、すごく大事だなと思っていたんですよ。」

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【白漆について】

「漆の専門的な勉強をしなかったことで、自分なりの漆の解釈が出来たのだと思います。自分自身が使い手として、生活者の場所に漆を引き寄せていった結果、白漆に辿り着きました。最初は黒い漆をやっていました。黒い漆というのは、例えば青いものをのせると凄く映えるのですが、何にでも合うわけではないと感じました。基本的に白い食器にはずっと憧れていましたので、磁器や粉引(こひき)に近い白い器を漆で作りたいと思い、白漆を作り始めました。」

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【小さなコミュニティー、小さな中心】

「小さなコミュニティーの中に作り手がいて、使う人がいて、話をしながら物が出来上がっていくと面白いと思います。大量生産に行き過ぎず、生活の範囲の中に、職人や色んな人がいる豊かさが生まれていく、これからはそういう風になって行く気がします。利便性よりも、心地よさを大事にする社会。」

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「作った人が誰かわかるだけでも大分違います。身近にいる人が作ってくれれば、気持ちが通じ合い、必要性から物が生まれます。言葉だけでなく、物だけでもない。
これまでは、作家ものか、効率優先で作られた工業的製品かの二極化が行きすぎていたように感じます。小さなコミュニティー、小さな中心が沢山生まれれば、二極化を縮めていくのではないかと思います。」

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三谷さんの器やカトラリーは、手跡が存在感を放っています。それにより、どうやって作られたものなのか、制作にどのくらいの時間がかけられたのか想像します。食卓に同じサイズの食器を並べて使いながらも、一つ一つが少しずつ違うことがかえって心地よく、均一でなくて良いということにも気付かされます。

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「生活こそが自分たちの自由であり、アイデンティティーを表現できる場。効率や生産性が必ずしも人間社会を幸福にしなかったことははっきりしました。やってみなければわからないことかもしれなかったけれど、やってみたらそうだったということがはっきりしました。違う形の社会を作っていく必要があると思います。」

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「生活の中で、ふと、こんなものが欲しいとか思うことがありますよね。必要に応じて、少量でも必要なものを作ってみる。そういうことが増えていけば良いのだと思います。」

【生活の中で】

「美術館と生活空間では求めるものが違います。生活空間に気をつけることで、つくるものも違ってきます。視覚だけに重点を置きすぎずに、自然を対象化し、一緒に生きるようなこと。触れるとか、味わうとか、着るとか、そういう五感に近いところに物が引き寄せられます。五感を大事にすると、視覚や、経済的価値観とは違う視点が生まれます。」

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「目に見えないことは言語化もしにくいのだと思います。伝えにくい。なんとなく皆わかるのだけど、言語化はしにくい感じ。そこにも大切なものはあります。」

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三谷龍二

木工デザイナー。 1952年福井県福井市生れ。 1981年、長野県松本市に工房「ペルソナスタジオ」を開設。職人たちとの共同作業により、ふだんづかいの木の器を作る。
minä perhonen elävä Iでは、2019年4月に三谷龍二個展「白ノ日」が開催された。

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photograph: Hua Wang