exhibition
  • 三谷龍二 “白ノ日” 4月20日~4月28日

    白ノ日。粉引の碗で、ご飯を食べた。
白ノ日。美術館の白い空間に包まれると、いつも、静かで、ニュートラルな気分になる。
白ノ日。何気ないのに、着る度に新鮮な気持ちになる。だから、白いシャツが好きだ。
白ノ日。大徳寺で狩野探幽の襖絵を見た。描かれているのはただ小さな山や、鳥。
    そして圧倒的な「余白」。
白ノ日。生まれたのは一晩で1 メートルほど雪が積もる北陸福井。道の両脇には
背丈の倍ほどもある雪の壁ができ、僕はその白い道を歩いて学校へ通った。
三谷龍二
    白漆の皿
朝鮮の庶民たちは、王侯で使われる
白磁に憧れて「粉引」を作った。
ヨーロッパの人々も、中国の白磁に
憧れ「デルフト焼」を作った。
「白」はずっと、人々の心を
とらえ続けてきた色だった。

そして、白漆の器もまた、
「白」への憧れだった。
      
三谷龍二


霧に包まれた草原は
湖面から生まれたばかりの
風を遠く山並みへ
見送った

柔らかな葉と露の中に
仕舞われていた朝は
野と空に放たれて

ささやかな安堵と
静寂な時のうつりの中に
在る
白ノ日
         
皆川明
    乾漆の舟

漆は木、土、皮、紙、布、鉄など、
様々な素材に塗ることができるが、
乾漆は麻布に漆を塗ったものだ。
天平の頃、この乾漆で多くの
仏像が作られた。
その遠く遥かな時代を思いながら、
僕は舟を作った。

三谷龍二


私の白ノ日
目覚めの夢の残像
g l a s s の水の表面張力
窓際の三毛猫の午睡
海底の底に揺れるモビール
木のてっぺんで囀る小さき翼
浮かんでは消える儚い詩
追憶の中の笑うあなた
もう戻らないあの日
白ノ日

皆川明
    陶胎漆器

仕事場の地面は、雨が降ると泥濘んで
困っていた。その粘土質の土が、実は
焼き物に向いているのだと教えられた。
土を捏ねる。成形する。窯で焼く。
足元にあった土から、器が生まれた。
そのことがとても新鮮だった。

三谷龍二


想いは手を伝い
それを具体する
その空想は
生命が過ぎた路に
咲く花のようだ
その花を摘み
象形する営みは
無我の中の夢
ある日の
白ノ日
          
皆川明

    三谷 龍二 “白ノ日”
    2019.4.20 Sat. - 4.28 Sun.
    open. 11:00~19:00
    elävä I

    三谷 龍二

    photograph:Hua Wang